空室くうしつ)” の例文
その室を一巡してから、法水は左隣りの空室くうしつに行った。そこは、昨夜易介が神意審問会の最中に人影を見たと云う、張出縁のある室だった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
自分はどうにかして旧恩に報いなくてはならない。自分の邸宅には空室くうしつが多い。どうぞそこへ移って来て、我家わがいえに住む如くに住んでもらいたい。自分はまずしいが、日々にちにちの生計には余裕がある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私の方が早ければ、ただ彼の空室くうしつを通り抜けるだけですが、遅いと簡単な挨拶あいさつをして自分の部屋へはいるのを例にしていました。Kはいつもの眼を書物からはなして、ふすまを開ける私をちょっと見ます。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
次の薬物室は階上の裏庭側にあって、かつては算哲の実験室に当てられるはずだった、空室くうしつを間に挾み、右手に、神意審問会が行われたへやと続いていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)