穴籠あなごも)” の例文
「殊にここらは山奥だもの。」と、市郎は笑って、「まあ、これから来年の春までは、蛇や熊のように穴籠あなごもりをして居るんだよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おお寒い寒い! 皆さん手に息を吹っかけて、家ん中へはいってオンドルの上にちぢこまる。へへん、笑いごっちゃあねえ。蛇だって寒いから、穴籠あなごもりだ。
氷冠内の穴籠あなごもりの生活に、食料と燃料が欠乏してきた。隊員二名の食料を来春まで確保するために、隊長ウェーゲナー教授は、忠実なエスキモーの案内者と二人で、氷冠の突破を企てた。
白い月の世界 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
当地のような大都会では何と申しましても穴籠あなごもり生活になってしまいますから
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
尊敬に価する教授や博士が穴籠あなごもりをしている所かも知れない。二三十年辛抱しんぼうすれば勅任官になれる所かも知れない。其他色々便宜べんぎのある所かも知れない。成程なるほどそう考えて見ると結構な所である。
入社の辞 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)