私刑リンチ)” の例文
催涙ピストル位い持出したところで、瞬く間に警察でも監獄でも焼打ちして、眼ざす人間を私刑リンチせずには止まないだろう。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
見ると吾輩の周囲には、梅をお先棒にした座員の一同が犇々ひしひしと立ちかかっている様子だ。これは前に一度見た事の在るこの一座のマワシといって一種の私刑リンチだね。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
夜半少し過ぎオリヴァア警察署の一役員が監禁者を留置場より出して私刑リンチに處すべしと市民が團結して來るとの噂ありと急報した。署内では後刻警官豫備隊を編成した。
無法な火葬 (旧字旧仮名) / 小泉八雲(著)
度重なって尚いう事を聞かない男には雇男の腕節の強いのに言い付けて私刑リンチを加えさした。不良と思う村娘の結婚には、旧家と村長の威光を以て意地悪く成婚を妨げた。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
末吉は説明書きの中に見える「私刑リンチ」という言葉に気をとられた。末吉の念頭にそのときの若者の殺気立った目つきとそれに乗じていった自分の心の動きが思い起された。
日日の麺麭 (新字新仮名) / 小山清(著)
それが犬芝居であらうが、懸賞決闘であらうが、黒奴の私刑リンチであらうが、結婚披露であらうがかまはない。精神顛倒が恐しければ恐しい程、群衆の歓喜と称讚とが激烈になるのである。
少数と多数 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
あれは一体、何者なのか、皆目かいもく俺には分らないが、およその見当はついていた。一味の裏切り者の、あれは極秘の私刑リンチだったのではないか。そうとなれば、ヤミからヤミもおかしくはない。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
彼は故郷自由の国アメリカ、黒人に対する私刑リンチが行われるときは巡査が交通整理して手伝ってくれる文明国にいるのだと感違いした。その時周囲に目撃していたのはソヴェトのプロレタリアートだ。
新しきシベリアを横切る (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
が州としては、フリント市のモッブ騒動の例もあり、未だに私刑リンチを要求する不穏の気が漲っているので、密かに、そして一日も早く罪を決めて終い度い。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
刑務所を取り巻く道路を埋め尽して、私刑リンチを叫ぶ声が怒濤のようにどよめき渡った。リイダアと、最も激昂した群集の一部は、シュナイダア家の町マウント・モウリスの人々だった。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)