石筍せきじゅん)” の例文
氷河氷の雨が、すだれを立てたように降りしきるかと思えば、また、太く垂れて石筍せきじゅんをつくり、つるつる壁を伝わる流れは血管のように無気味だ。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「下をごらん。あの下にきっと石筍せきじゅんがあるから。ああ、ある、ある。まるで白いお化けきのこみたいだねえ。」
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そしてそれが冷えきるまでには、たくさんの乳房がれさがる。これが熔岩の鍾乳石である。熔岩のしずくが垂れ落ちれば、鍾乳洞の場合のように、下に石筍せきじゅんができるはずである。
黒い月の世界 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ところが、はたして彼のことばのごとく、窓の掛金には石筍せきじゅんのようなさびがこびり付いていて、しかも、清掃されている室内には、些細の痕跡すら留められていない。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
まるで月世界の山脈か砂丘のような起伏、石筍せきじゅん、天井からの無数の乳房、それが、光をうけるとパッと雪のようにかがやく。きよらかな……まったくこんな中で死ねれば有難いと思った。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)