矮林わいりん)” の例文
矮林わいりんが、藪だたみが、まだ消えやらない山頂の霧の影を寫して、白く光る處、薄暗く隈どる處、人間の住まない寂しい原野の姿を見せてゐる。
霧の旅 (旧字旧仮名) / 吉江喬松(著)
それで安心して歩いていると、この道がまたなかなか尽きそうもなくなった。赤松の矮林わいりんの間には相変わらずつつじが咲いている。道傍に石地蔵の並んだ所もあった。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
アルルの近郊プロヴァンスに近い平坦な野原に朦朧とたたずむ橄欖オリーブ矮林わいりんのそばを轟々ごうごうたる疾駆を続けてゆく。
汽車が武蔵むさしの平野へ降りてくるにつれて、しっとりした空気や、広々となだらかな田畠や矮林わいりんが、水から離れていた魚族の水に返されたような安易を感じさせたが、東京がちかづくにつれて
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
続いて「ヤッ」という気合の声! それに答える「エイッ」という声! 森々しんしんと更け渡った深夜ではあり、巨木矮林わいりん茂り重なった、木曽の山路であるだけに、恐ろしさも一層であった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたしはそこの樫の矮林わいりんのなかに煉瓦がのこっているのを見た。