矢車草やぐるまそう)” の例文
紫陽花あじさい矢車草やぐるまそう野茨のいばら芍薬しゃくやくと菊と、カンナは絶えず三方の壁の上で咲いていた。それははなやかな花屋のような部屋であった。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
グピーの図を見せると、「これは八大山人はちだいさんじん焼直やきなおしだね」とすぐ見破ってしまうし、コスモスの絵は矢車草やぐるまそうかと思ったというので、いささか出鼻でばなを折られた。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
むすめはかくまで海がおだやかで青いのに大喜びをしましたが、よく見ると二人の帆走っているのは海原うなばらではなくって美しくさきそろった矢車草やぐるまそうの花の中でした。
よいに月が出る時は、いつも矢車草やぐるまそうの森の精が御殿の庭まで迎えに来てくれました。王子は千草姫の所に行って、御殿の戸がしまる十時少し前に帰って来られました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
裏の百姓家も植木師をかねていたので、おばあさんの小屋こいえの台所の方も、雁来紅はげいとう天竺葵あおい鳳仙花ほうせんか矢車草やぐるまそうなどが低い垣根越しに見えて、鶏の高くときをつくるのがきこえた。
彼は部屋の壁々に彼女の母の代りに新しい花を差し添えた。シクラメンと百合の花。ヘリオトロオプと矢車草やぐるまそう。シネラリヤとヒアシンス。薔薇ばらとマーガレットと雛罌粟ひなげしと。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
いつのまにか、矢車草やぐるまそうの花をつけた森の精が出て来て、王子を城の庭まで送って来ました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
王子はぼんやり立っていられますと、どこからか矢車草やぐるまそうの花をつけた森の精が出て来まして、腕輪と黒い鳥の尾とを手にしていられる王子を、お城の中へ送り返してくれました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)