眼遣めづかい)” の例文
敬太郎は自分の存在をわざと眼中に置かないようなこの眼遣めづかいの底に、かえって自分が気にかかっているらしい反証を得たと信じた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乙な眼遣めづかいをし麁匆ぞんざいな言葉を遣って、折節に物思いをする理由いわれもない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
こう云われて見ると、田口が自分に気を許していない眼遣めづかいやら言葉つきやらがありありと敬太郎けいたろうの胸に、うたがいもない記憶として読まれた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども彼の心のうちに何事が起りつつあるかをまるで知らない車中の乗客は、彼の眼遣めづかいに対して少しの注意も払わなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「○○さんは今何をしておいででございますか」と女はまた空中に何物をか想像するがごとき眼遣めづかいをして父に聞いた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助はこれを黒眼の働らきと判断していた。三千代が細君にならない前、代助はよく、三千代のこう云う眼遣めづかいを見た。そうして今でも善く覚えている。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もう食事を済ましていた嫂は、わざと自分の顔を見て変な眼遣めづかいをした。それが自分には一種の相図のごとく見えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かつちょっと狼狽ろうばいした。そうして先刻さっき岡田が変な眼遣めづかいをして、時々細君の方を見た意味をようやく理解した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)