眼識めがね)” の例文
さすがは泰親の眼識めがねほどあって、年にもして彼の上達は実に目ざましいもので、明けてようよう十九の彼は、ほかの故参の弟子どもを乗り越えて
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
見ること、親にかずじゃ。この親たる江漢が断じて言う、断じて言う! 郁次郎を罪人というお眼識めがねは違っている
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其の書置かきおきに、私は老年の病気だから明日あすが日も知れん、し私がのちは家督相続は惣二郎、又弟惣吉は相当の処へ惣二郎の眼識めがねを以て養子に遣って呉れ、形見分かたみわけは是々
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
万一眼識めがねにかなえば、お品——出戻りのまずい面じゃ、大して有難くもあるまいが、とにかく、お品と娶合めあわせるなり、それがいやなら外から嫁を取って、俺の跡を継がしてもいい
数の多い候補者の中でお常の眼識めがねに叶った婿は、大伝馬町の地主弥太郎が手代又四郎という男で、彼は五百両という金の力で江戸中の評判娘の夫になろうと申込んで来た。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
達眼たつがんは達眼を知るという。江漢老人の眼識めがねで見て、あれほどにめる人物ならば確かなものであろう、と東儀与力は、はやくその誰であるかを聞きたい気もちに駆られた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その奉行越前守——吉宗の眼識めがねで、吉宗が、使命目的のために、据えたといってよい者が、いまや、まだ前途に多くの抱負をのこして、事績、いくばくも挙げないうちに
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)