眼色めざし)” の例文
月を浴びてものすごきまで美しき女の顔を、無遠慮に打ちながめたる渠の眼色めざしは、ひそめる眉の下より異彩を放てり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あをにごれるほほの肉よ、さらばへる横顔の輪廓りんかくよ、曇の懸れるまゆの下に物思はしき眼色めざしの凝りて動かざりしが、やがてくづるるやうに頬杖ほほづゑを倒して、枕嚢くくりまくらに重きかしらを落すとともに寝返りつつ掻巻かいまき引寄せて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
白糸の眼色めざしはその精神の全力をあつめたるかと覚しきばかりの光を帯びて、病めるに似たる水のおもたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その年紀としごろは二十三、四、姿はしいて満開の花の色を洗いて、清楚せいそたる葉桜の緑浅し。色白く、鼻筋通り、まゆに力みありて、眼色めざしにいくぶんのすごみを帯び、見るだに涼しき美人なり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)