眞黒まくろ)” の例文
新字:真黒
媼は我をきて進み入りぬ。小屋のうちは譬へば大なる蜂窩はちのすの如くにして、一方口より出で兼ねたる烟は、あたりの物を殘なく眞黒まくろに染めたり。
眞黒まくろひれのひたうへに、沈々として眠るのみ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
高き石がきは、まつはれたる蔦かづらのために、いよゝおそろしなり。青き空をかすめて、ところ/″\に立てるは、眞黒まくろにおほいなるいとすぎの木なり。
遠くクヰリナアル(丘の名にて、其上に法皇の宮居あり)と家々のむねとを越えて、紅に染まりたる地平線のわたりに、眞黒まくろに浮き出でゝ見ゆる「ピニヨロ」の木々の方へ、飛び行かばや、と願ひき。