眉唾物まゆつばもの)” の例文
と、いつも庄造はさう答へるにまつてゐた。あの女は兎角とかく懸引かけひきが強くつて、底に底があるのだから、何を云ふやら眉唾物まゆつばものである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
馬またこの通りなるに、生まれ付いて駱駝流にあるく馬があったとは眉唾物まゆつばものだろう。しかし教えさえすればさように歩かしむるを得。
「ははあ——眉唾物まゆつばものではござるまいなあ。まさか、奥州仙台陸奥守のことでござるから、嘘にしても何かよるところがあるでござろうがな」
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まずこうとでも云わずばなるまい……とは云え余りに野性が多い。いわゆる磨かぬ宝玉じゃ……南条右近の三男と云うがこれは少々眉唾物まゆつばものだ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いくら小仏だって、今の世に、そんな妖怪や変化へんげが出てたまるもんか、そいつは眉唾物まゆつばものだよ、とテンから笑い消す者がある。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見たまえ——今の京都には、なんでもある。公武合体から破約攘夷まである。そんなものがうずを巻いてる。ところでこの公武合体ですが、こいつがまた眉唾物まゆつばものですて。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、いつも庄造はそう答えるにまっていた。あの女は兎角懸引かけひきが強くって、底に底があるのだから、何を云うやら眉唾物まゆつばものである。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
白雲も、当世流行の勤王家や、佐幕党に、かなり眉唾物まゆつばものの多いことを知っている。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
公の局外中立と云うのは甚だ眉唾物まゆつばものであって、蔭で檜垣衆の尻押しをしていたらしいことは、大体間違いがないのである。
あの女は兎角懸引かけひきが強くつて、底に底があるのだから、何を云ふやら眉唾物まゆつばものである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)