目付めつき)” の例文
何にいたせわたくしはついぞあんな人間を見た事もございませんし、また人間があんな目付めつきをいたしているはずがございません。
鳩というものは可愛らしいはずなのに、目付めつきがどうも強いのです。簡単な彫りですから、他の鳥なのかもしれません。これが根附を集める始めでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
乃公はどうも変だと思って、早くから気をつけて門を出たが、趙貴翁ちょうじいさん目付めつきがおかしいぞ。乃公を恐れているらしい。乃公をやっつけようと思っているらしい。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
生徒監せいとかんのセルゲイ・イヴァーヌイチは、うさんくさそうな目付めつきで、ひたとこの少年しょうねんを見つめた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
換言すれば獅子ライオンと呼ばれたる神権の帝王に対して、如何程の抵抗を試み得るものかと興ある事に眺め下した人々の目付めつき、その目付も斯くやあつたらうと、心の中に想はるる。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夏の盛りの折々にはやはり一隊の囚人が土手の悪草を刈っている事もありました。それをば通行の人々が気味悪そうな目付めつきをしながらしかもまた物珍しそうに立止って見ていました。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また暴風雨あらしなかを照り輝ける諸船もろふねの眞帆あげて遠ざかり行くが如き目付めつきもあり。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「ええつ。」と男は問返すやうな目付めつきをした。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
また何處いづこにかほかる事能はずして苦む目付めつきあり、げにあはれむに堪へたるかな。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
おだやかならぬ目付めつきして
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あはれみ給へ、食事の時に迷兒まひごとなりしやうなる目付めつきを。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)