瘰癧るいれき)” の例文
「知識と検証とさ。結核患者や瘰癧るいれき患者はその病状を見ればわかる。悖徳はいとく漢や狂人はその行状を見ればわかる。」
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
皺ばんだ瘰癧るいれきのように思われるのであるが、そうして色がしだいに淡く、視野がようやく闇にとざされようとしたとき、ふと異様な物音を、ウルリーケは隣室に聴いたのである。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
誰だったか、一寸度忘れをしてしまったが、三つ四つの時に女王陛下の御前へ出て、玉手ぎょくしゅを触れていただいた記憶があるといっている。これは確か瘰癧るいれきの直るおマジナイだった。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
バーテン君は感心したようにうなずいて、(その首には瘰癧るいれきかなんかの傷痕きずあとがあった。)
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
例の瘰癧るいれきの男と学校で会って僕が彼に思索せぬことをなじったら彼は次のごとく答えた。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
瘰癧るいれきでも手術なすったあとですか」と私は何気なくたずねた。
遺伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
狼瘡ルウパス、風眼、瘰癧るいれき、それからあらゆる期程の梅毒——。
「一、へそ問答、二、風や海や空、三、瘰癧るいれきのある人生、四、不格好な女、五、鍛冶屋かじや同士の耳打話と、どうだい、どれだって面白そうじゃないか、それなのに、これが一本の酒手にもならんというのだから不思議だよ……」
泣虫小僧 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
頬には、刀傷や、異様な赤い筋などで、皺が無数にたたまれているばかりでなく、兎唇みつくち瘰癧るいれき、その他いろいろ下等な潰瘍かいようの跡が、くびから上をめまぐるしく埋めているのだった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
例の瘰癧るいれきのO君とはただ文学上において話せるのみだ。彼は根本的思索には心が向かっていない。彼は考えずしてただ味わおうとのみつとめている。彼の唯一の根底は生の刺激すなわち歓楽である。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)