田楽刺でんがくざ)” の例文
旧字:田樂刺
伊那丸の身は、その槍先やりさき田楽刺でんがくざしと思われたが、さッとかわしたせつな、槍は伊那丸の胸をかすって流るること四、五尺。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いきなり手に持っていた長い竿を秋草の植込の中へ突っ込んで引き出すと、その先へ田楽刺でんがくざしに刺された黒いもの。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
田楽刺でんがくざしにしてやることが、かえって娘夫婦のためだと思った。故に老巧な治部太夫は、必殺の構えをつけた、にわとりくに牛刀をつかう恨みを、心のうちに感じながらも、着実に進退した。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
四方八方より田楽刺でんがくざしと致すのでござります。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひとりのむなさきを田楽刺でんがくざしにつきぬくがはやいか、すばやく穂先ほさきをくり引いて、ふたたびつぎの相手をねらっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物を言えば必ず田楽刺でんがくざしに刺されてしまいそうである。思いがけない気狂いだと思いました。誰もまだ、ほんとうに米友が槍を心得ているのだと気のついたものはありません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人交ひとまぜもせずに、一打ちとなったやりやりは、閃光せんこうするどく、上々下々、秘練ひれんを戦わせていたが、たちまち、朱柄あかえやりさきにかかって、猪子伴作いのこばんさく田楽刺でんがくざしとなって、草むらのなかへ投げとばされた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)