田安たやす)” の例文
空空は田安たやす家の近習番きんじゅばん後に御広敷御用人となった児玉喜太郎こだまきたろうである。心越しんえつ禅師の伝えた七絃琴の名手であったという。白藤は鈴木氏、名は成恭、通称は岩次郎。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それお前も知っている通り、この頃田安たやす家と一ツ橋家とは、何彼につけて競争ばかりし、面白くない気勢が醸されているが、とうとう変なものを争うようになったよ」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今度、城を明け渡すについては、和宮さまは田安たやすの方へお移りになるから、あなたは一橋家の方へお移りなさいと言われても、容易に天璋院さまは動かなかったとありますね。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かぞへつゝたくみも深き御堀端ほりばた此處ここぞと猶豫ためらふ一番町たやすく人は殺せぬ物と田安たやす御門も何時いつか過ぎ心もくらうしふちを右にのぞみて星明ほしあかり九段坂をも下り來て飯田町なる堀留ほりどめより過るも早き小川町をがはまち水道橋すゐだうばし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)