こしき)” の例文
艫部に乘つた五十六人は薩摩國こしき島郡に、舳部に乘つた四十一人は、肥後國天草郡に漂着して、不思議に生命を全くしたことがある。
大師の入唐 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
イヒはこしきでふかすこと今日の赤飯のごとくであったが、そんな方法をもって飯を製することは節供せっくの日ばかりになった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その二には、きさき御産の行事として、御殿の棟からこしきを落す習慣があり、皇子の時は南、皇女の時は北と決まっていたが、この時には間違って北に落してしまい、慌てて落し直すという珍事ちんじがあった。
今から考えてみると形がややこしきと似ている。甑はもう使用する人がないから、いたって古い命名であることがわかる。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今から考へて見ると形がやゝこしきと似て居る。甑はもう使用する人が無いから、至つて古い命名であることがわかる。
食料名彙 (旧字旧仮名) / 柳田国男(著)
たとえば一つのかめかもした酒、一つのこしきした強飯こわめし、一つのうすもちや一畠のうり大根だいこんを、分けて双方そうほうの腹中に入れることは、そこに眼に見えぬ力の連鎖を作るという
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)