瑜伽ゆが)” の例文
この叡空上人は大原の良忍上人りょうにんしょうにん附属ふぞく円頓戒相承えんどんかいそうじょうの正統であって、瑜伽ゆが秘密の法に明かに当代に許された名師であった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
他目よそめにもかずあるまじき君父の恩義惜氣をしげもなく振り捨てて、人のそしり、世の笑ひを思ひ給はで、弓矢とる御身に瑜伽ゆが三密のたしなみは、世の無常を如何に深く觀じ給ひけるぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
けれども寂念モーローの先生は、凡そ天地に生あるものは運動するといふ法則を忘れて、瑜伽ゆがの断食行者にしては少々だらしなくノビすぎて全然化石してゐるのであつた。
風人録 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
この上は心よく、親鸞影像を戻し返してつかわすのみか、他宗ながら忰源兵衛の菩提も、こなたでとむらい追善供養。三密瑜伽ゆがの加持力にて、安養成仏諸共に、即身成仏兼ね得させん。
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「それがし、九識くしきの窓の前、妙乗の床のほとりに、瑜伽ゆがの法水をたたえ——」
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
成島柳北だつたかの瑜伽ゆが紀行を読むと、この文人が備前の瑜伽山に参詣の途中、舟で児島半島の沖を通つたことがあつた。昼飯時に船のものが焼いて出した小魚に箸をつけてみると、不思議にうまい。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ミーマンサーとか瑜伽ゆが哲学など婆羅門ばらもん秘奥の哲理に就いても思索を重ね、つづいて仏教の本義を会得したいと勉めてゐるが、数年の思索の結果阿頼耶識あらやしきも理解し得たつもりであるし
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)