猿橋えんきょう)” の例文
「いやな声が聞えるじゃないか、耳のせいか知らないが、甲州の猿橋えんきょうの下へつるされたやえんぼうが、ちょうど、あんな声を出していたよ」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
猿橋えんきょうあたりへ来ると、窓から見える山は雨が降っているらしく、模糊もことして煙霧につつまれていたが、次第にそれが深くなって冷気が肌に迫って来た。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
猿橋えんきょう辺から出沢すざわにかけて防戦したが、勝頼落延びたりと見届けると、岡の上に馬を乗り上げ、「六孫王経基つねもとの嫡孫摂津守頼光より四代の孫源三位頼政の後裔馬場美濃守信房」
長篠合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
元より、貪慾好色なあぶれ者は、思いがけなく小仏のやみにまぎれ込んだ妖花の一輪を、存分になぐさみ揉みにじッて、甲府か猿橋えんきょうあたりのくるわにでも売り飛ばそうという腹にちがいない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)