猶子ゆうし)” の例文
秀秋は高台院の猶子ゆうしで、太閤の一族、福島正則ほどの大名でもこれと同席さえすることのできなかった家柄である。刑部は何故に礼を忘れた。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
璋子は、人も知る白河法皇の猶子ゆうしで、祖父法皇のおはからいで、天皇に配されたきさきであることは、さきに誌した通りである。
峯の阿闍利さまは去る由緒ある猶子ゆうしであられたそうですが、あまり村里へはお下りではなく、谷あいの松をわたる風の音や、珍らしい草木をあつめなどして
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
中納言の姫君は弘徽殿こきでん女御にょごと呼ばれていた。太政大臣の猶子ゆうしになっていて、その一族がすばらしい背景を作っているはなやかな後宮人であった。陛下もよいお遊び相手のように思召された。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私の猶子ゆうしとなっておりますゆえ、いかな平家のあらくれ武士も、よもやと思ってはおりますが、私に、恨みをふくむ者もあって、十八公麿の実父有範ありのりこそは、源三位げんざんみ頼政公の謀叛むほんに加担して
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「されば、あの僧は、亡き皇后大進有範だいしんありのりの子にて日野三位さんみ猶子ゆうしにてとか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お見知りおき下さいませ。猶子ゆうし、十八公麿と申しまする」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)