独白どくはく)” の例文
旧字:獨白
富岡は煙草に火をつけて、ゆつくり煙を吐きながら、心のなかで、もう遅いよと独白どくはくしてゐる。だが、考へてみると、遅くもない気がした。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
年の若い巡査は警部が去ると、大仰おおぎょうに天を仰ぎながら、長々ながなが浩歎こうたん独白どくはくを述べた。何でもその意味は長いあいだ、ピストル強盗をつけ廻しているが、逮捕たいほ出来ないとか云うのだった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「黄金仮面」の噂を精々せいぜい物凄く話し合うことよろしくあって、彼等が引込むと、この芝居の副主人公とも云うべき、非常な臆病者おくびょうものが登場し、暫く独白どくはくをやっている所へ、うしろの木立を分けて
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして低く独白どくはくのようにつぶやいた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
袈裟けさ盛遠もりとほ」と云ふ独白どくはく体の小説を、四月の中央公論で発表した時、或大阪の人からこんな手紙を貰つた。「袈裟はわたるの義理と盛遠のなさけとに迫られて、みさほを守る為に死を決した烈女である。 ...
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
使 (独白どくはく)どうもおれは正直すぎるようだ。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)