犬飼現八いぬかいげんぱち)” の例文
染之助の信乃は、相手の犬飼現八いぬかいげんぱちと、烈しい立ち廻りをしながら、すきのあるごとに私の方へ、燃ゆるような流瞥ながしめを送っているのですよ。
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そのうちの一枚は八犬伝の一節で、犬塚信乃いぬづかしの犬飼現八いぬかいげんぱち芳流閣ほうりゅうかくの上で闘っておりますところで、今一つは阿古屋あこや琴責ことぜめの舞台面になっております。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬琴ばきんの『八犬伝』のうちに、犬飼現八いぬかいげんぱち庚申山こうしんざんで山猫の妖怪を射るくだりがありますが、それはこの『申陽洞記』をそっくり書き直したものでございます。
犬山道節どうせつが森鴎外で、色は黒、花では紫苑しおん犬飼現八いぬかいげんぱちは森田思軒で、紫に猿猴杉えんこうすぎ。犬塚信乃しのが尾崎紅葉で緋色ひいろ芙蓉ふよう。犬田小文吾こぶんごが幸田露伴、栗とカリン。大法師が坪内逍遥で白とタコ。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
彼は又、かつて読んだ八犬伝のうちで、犬飼現八いぬかいげんぱち庚申山こうしんざんに分け入るの一段を思い出した。現八は柔術やわらに達していたので、岩の多い難所なんじょを安々と飛び渡ったと書いてある。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)