犀川さいかわ)” の例文
うしろの犀川さいかわは水の美しい、東京の隅田川ほどの幅のある川であった。私はよくかわらへ出て行って、鮎釣りなどをしたものであった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ここ数日来、高原地方の天候は定まらないとみえて、真下の千曲川も彼方の犀川さいかわも、甚だしく水かさが増したかに見える。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信州の犀川さいかわ流域などは一般に、物の高低長短があることを山の神といい、その根本には山の神が片足神であるという俗信がまだ残っているらしい。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
千曲川は犀川さいかわといっしょになってからがいい、つまり川中島からしものほうがいいと言いますし、一方のかわずはまた、臼田うすだあたりからかみのほうがいいと言いまして
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ことに堀武三郎というのは、加賀では大川おおかわである手取川てどりがわでも、お城下さきを流れる犀川さいかわでも、至るところの有名な淵や瀬頭せがしらを泳ぎ捜ることが上手であった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
犀川さいかわに沿い、千曲ちくまの急流を測り、山に拠ってみたり、丘を擁して兵馬を休めてみたり、容易に、そのるところの全陣地が定まらないもののように見えた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加賀には残月という六十ばかりの僧、かつて犀川さいかわと浅野川の西東に流れていた時を知ってるといった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一体、犀川さいかわに合するまでの千曲川は、ほとんど船の影を見ない。ただ、流れるままに任せてある。この一事だけで、君はあの川の性質と光景とを想像することが出来よう。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
犀川さいかわの上流で、やや遅れぎみの若葉が淵の上を半分以上覆いかぶさって、しんと、若葉の風鳴りがすると、それにつれて、淵の蒼い水面に鱗がたのさざなみが立って
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
行手に、犀川さいかわの水音、また丹波島たんばじまの木立らしい影。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雪国の鬱陶うっとうしさよ。汽車は犀川さいかわを渡った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私がうるさく思いはせぬかと気をかねるようにして、いつも裏の犀川さいかわの水を汲みにやらせた。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)