物徂徠ぶつそらい)” の例文
日本人にしましても、大体はそうでありますが、それでも儒者中で物徂徠ぶつそらい(荻生徂徠)の如きは、やはり優美性が十分あります。
義雄が初めて面會した時、奧から出して來て見せた物徂徠ぶつそらいの掛け物で、この支那崇拜家が例の變挺へんてこ宇畫じくわくをひねつてあるのも、一方の壁に釣してある。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
歴山アレキサンダー王、ナポレオンの功業を察し、ニウトン、ワット、アダム・スミスの学識を想像すれば、海外に豊太閤ほうたいこうなきに非ず、物徂徠ぶつそらいも誠に東海の一小先生のみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
物徂徠ぶつそらい曰く、「無よりしてこれあり、これを神という。有よりしてこれなし、これを鬼という。ただそれ、そのこれにおけるや、もって鬼神の情状を知るべし」
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
物徂徠ぶつそらいは、その著「明律国字解」において、刑名律を刑名・法例の二編に分ったのは梁律であると言うておるが、その出所を示しておらぬから断言は出来ないが、けだし誤謬であろう。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
その他もし、浮浪、兵学家、儒者の徒についてこれを尋ねば、革命の卵は、あたかも海浜の砂礫されきの如くあらん。彼ら豈に物徂徠ぶつそらい源白石げんはくせき中井竹山なかいちくざんの如く、実際の曲折に応じて、論理を作為せんや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
徳川時代になって物徂徠ぶつそらい、あるいは良寛禅師とか、それからもっともよい字を書いたのは大徳寺の高僧たちであります。
羲之ぎしを学んで能書の聞こえ高かりし物徂徠ぶつそらい(荻生徂徠)の如きも過去にもあるにはあるが、良寛の如き美しき芸術性は具わらず、超凡というところまでは行かなかった。
良寛の書 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
彼の物徂徠ぶつそらいほどの人間でさえ、中国風には兜を脱いでその容貌風采に全く惚れきってしまったくらいだから、大概な人間が一応はチャームされるのも決して無理はないが
陶磁印六顆を紹介する (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)