爪楊枝つまようじ)” の例文
最前からの疲れと、アルコールの利き目とが一緒にあらわれたものであろう。爪楊枝つまようじを使う間もなく崩れ落ちるように睡くなった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
猿沢はちょっと会釈えしゃくしただけで、だまって爪楊枝つまようじをしきりに使っていました。これは主に、食事がもう終ったということを蟹江に示すためです。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
と言う使いの口上を半分も言わせず、平次は爪楊枝つまようじを叩き付けるように、ガラッ八を促して、横山町へ駆け付けました。
「直しておやり。」越後も食事がすんだらしく爪楊枝つまようじを使いながら、にやにや笑って言った。どうも、けさは機嫌きげんがよすぎて、かえって気味が悪い。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「おばさん今晩は」そう云いながらさっさとあがって来、爪楊枝つまようじを使っている繁次の脇に坐った、「おめえに見せてえものがあるんだ、こいつを見てくれ」
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たとえば爪楊枝つまようじを何ページ目かにはさんでおいて、開けるとパラリと落ちるようにしておく。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「言葉が悪いね、気をお付けよ。彼奴だろうはひどかろう」紫錦は爪楊枝つまようじを噛みしめた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は仕方なく銀杏ぎんなんの実を爪楊枝つまようじでつついて食べたりしていた。しかし、どうしても、あきらめ切れない。
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
親分の銭形平次の名代みょうだいで、東両国の伊勢辰いせたつでたらふく飲んだ参会の帰り途、左手に折詰をブラ下げて、右手の爪楊枝つまようじで高々と歯をせせりながら、鼻唄か何か唄いながら
そして外へ出ようとすると、向うの障子があいて、和助が爪楊枝つまようじを使いながら出て来、栄二を呼びとめた。栄二は敷居をまたいだ恰好のまま振り向き、会釈をして「またあとで来ます」と云った。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と、老妓は爪楊枝つまようじを手でかこって使いながら、芸者の方へうなずいて置いて
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
爪楊枝つまようじで歯をせせりながら、太平楽をめますが、いくらか酒量の少ない女房のお市は、さすがに不気味だったとみえて、幾度も躊躇ためらいながら、それでも立上がって、雨戸へ手を掛けました。