熟視みつめ)” の例文
旦那様は少許すこし震えて、穴の開く程奥様の御顔を熟視みつめますと、奥様は口唇くちびるかすか嘲笑さげすみわらいみせて、他の事を考えておいでなさるようでした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さてかくわが心は全く奪はれ、固く熟視みつめて動かず移らず、かつ視るに從つていよ/\燃えたり 九七—九九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
不図ふと、御自分の御言葉に注意こころづいて、今更のように萎返しおれかえって、それを熟視みつめたまま身動きもなさいません。しんだ銀色の衣魚しみが一つその袖から落ちました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と言われて、西は黙って記者を熟視みつめた。三吉は二人の周囲まわりを歩いていた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男は奥様の御言葉に打たれて、黙って奥様の美しい目元を熟視みつめました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)