煙管筒きせるづつ)” の例文
いやまた、こう辟易へきえきして、棹を畳んで、懐中ふところしまい込んで、煙管筒きせるづつを忘れた、という顔で帰る処もおもしろい感じがするで。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
例えば煙管筒きせるづつのような品は、東京出来を誇っていましたが、もう流行おくれになりました。中で手拭てぬぐいとか中型ちゅうがたの染物の如きは、おそらく今も東京が中心でありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ねえやにお茶をいいつけておいて、すっぽんと煙管筒きせるづつをぬきながら、こういった。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
吉五郎はつづけて煙草をった。留吉も煙管筒きせるづつを取り出した。親分と子分は暫く無言で睨み合っていると、その考えごとの邪魔をするように、町内の午祭りの太鼓の音が賑やかにきこえた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
公園の茶店に、一人しずかに憩いながら、緋塩瀬ひしおぜ煙管筒きせるづつ結目むすびめを解掛けつつ、と思った。……
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
胴乱どうらんだとか煙管筒きせるづつだとか、色々の種類を並べますが、中で注意すべきは紙縒細工かみよりざいくで、黒塗のも朱塗のも見かけます。大体紙縒細工は朝鮮が優れた仕事を見せますが、我国では江戸で発達しました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
公園の茶店ちゃみせに、一人しずかいこひながら、緋塩瀬ひしおぜ煙管筒きせるづつ結目むすびめ解掛ときかけつゝ、と思つた。……
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その間に、きりりと挟んだ、煙管筒きせるづつ? ではない。象牙骨ぞうげぼねの女扇を挿している。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)