煖炉ペチカ)” の例文
旧字:煖爐
そこでわしたち子供一同は一塊りに寄りたかつて、老いこんでもう五年の余も煖炉ペチカから下りて来ない祖父ぢぢいの話に聴き入つたものぢや。
煖炉ペチカのなかで、コオロギが鳴く。となりの部屋では、ドアごしに、主人と従弟いとこのアファナーシイのいびきが、をおいてきこえる。
ねむい (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
燈明から、みどり色の大きな光の輪が天井に射し、お襁褓やズボンは、ほそ長い影を、煖炉ペチカや、揺りかごや、ワーリカに投げかけている。
ねむい (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
野良仕事がすつかり片づくといふと、待つてゐたとばかりに百姓たちは長の冬ぢゆう、のうのうと体を休めるために煖炉ペチカの上へ這ひあがり
「おやおや、兄弟! 冗談でなしにまぶたが重くなつたと見えるな。もうそろそろ我が家へ帰つて煖炉ペチカの上へ這ひあがりたくなつたのぢやらう!」
ワーリカは段々を洗い、部屋部屋の掃除をし、もう一つべつの煖炉ペチカを焚きつけ、それから店のほうへ駈けてゆく。仕事が多いので、一分間のひまもない。
ねむい (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
煖炉ペチカが家のなかぢゆうを歩きまはつて鋤や壺や盥を戸外そとへ追ひ出しただの……なんだのと、さつぱり辻褄のあはぬ夢を見てゐたのだと話した。
おい、おつかあ、そこの皮外套トゥループを取つてくんな、寝敷にするだよ。おめえのゐる煖炉ペチカの上へなんぞ行くもんけえ。どうしてどうして、行くもんけえ。
チューブが教父クームと腕をくみあつて、もうかなり家から遠く離れてゐるのを見てとつたので、彼は瞬く暇に煖炉ペチカから舞ひあがつて、二人の先𢌞りをして
彼は安楽椅子に腰かけたまま、そろそろ借地人の横着や細君の気紛れに悪態をつきはじめたが、例によって細君の顔は見ないで、煖炉ペチカの角へ眼をやっていた。
部屋の真中に置かれた二つ三つの袋の他には誰ひとり人影のないのを確かめると、のこのこと煖炉ペチカから這ひだして、温かさうに著ぶくれた裘衣コジューフを脱ぎ捨てて服装みなりをなほした。
彼等の父親たちは楽々と煖炉ペチカのうへに寝そべつてゐたが、時をり、吸ひつけた煙管をくはへたまま戸外そとへ出て来ては、いかにも素晴らしい大寒日和をさんざんに褒めののしつたり
混合酒ワレヌーハ洎天藍さふらん入りの火酒ウォツカがチューブを誘ひ寄せもしたであらうけれど、こんな暗夜に彼を煖炉ペチカから引き離して、家からおびき出すことはちよつと誰の手にもをへることではなかつた。
それはさて、何のためにこんな話をするのだらう? もうまる一時間も煖炉ペチカの中を掻き立てて、煙草の火を探してゐる人があるかと思へば、何の用があるのか、納屋の後ろへ駈けこむ御仁がある。
再度の驚愕でやうやく我れに返つた教父は、わなわなと顫へながら女房の裾のしたへもぐりこんだ。長身のつぽの勇士は狭い焚口から無理やりに煖炉ペチカのなかへ這ひこむなり、自分で焚口の扉を閉めてしまつた。