焦茶こげちや)” の例文
今は夕靄ゆふもやの群が千曲川ちくまがはの対岸をめて、高社山かうしやざん一帯の山脈も暗く沈んだ。西の空は急に深い焦茶こげちや色に変つたかと思ふと、やがて落ちて行く秋の日が最後の反射をに投げた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼は焦茶こげちやいろの鳥打ち帽をかぶり、妙にぢつと目を据ゑたまま、ハンドルの上へ身をかがめてゐた。僕はふと彼の顔に姉の夫の顔を感じ、彼の目の前へ来ないうちに横の小みちへはひることにした。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かくなるはこかしづくり、焦茶こげちやの色のわくはめて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
其は深い焦茶こげちや色で、雲端くもべりばかり黄に光り輝くのであつた。帯のやうな水蒸気の群も幾条いくすぢか其上に懸つた。あゝ、日没だ。蕭条せうでうとした両岸の風物はすべての夕暮の照光ひかりと空気とに包まれて了つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かくなるはこかしづくり、焦茶こげちやの色のわくはめて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)