点前てまえ)” の例文
三河守は、茶わんを置き茶せんをそそぎ、女性のような細心な点前てまえを静かにつづけている。もとよりいかめしい武装のままである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御亭主には、いつのまにやら、お点前てまえ行作ぎょうさも、お見事になられましたな。きょうは、とくと拝見して余りのお変りように、思わず見恍みとれました」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして——彼女がその火の上にかけた釜の口から、やがて松風がたぎりだすと、吉野の心は、いつもの落着きに返って、静かに、茶の点前てまえにかかっていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗易は、亭主として、点前てまえに坐ったが、茶杓ちゃしゃくの手さき、釜の注水つぎみずの音、少しも乱れていなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長自身が、点前てまえしているものとみえる。茶柄杓ちゃびしゃくから茶碗におとす湯の音が、しずかに聞える。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)