火口ほぐち)” の例文
蛍火ほたるびか。……象の脚元で火口ほぐちの火のような光がチラと見えたと思うと、どうしたのか、象が脚元からドッとばかりに燃え上った。
「あつしもあんなに驚いたことはありませんが、周太郎はなほ驚いた樣子で、顎や頬から、火口ほぐちを剥ぐのに夢中でしたよ」
そのとき、耶馬台の軍はまばらに一列に横隊を造って、静々と屍を踏みながら進んで来た。彼らの連なった楯の上からは油をにじませた茅花つばな火口ほぐちが鋒尖につきささられて燃えていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
黒煉瓦焼く火の火口ほぐち夜は見えてけしきばかりをかんゆるぶめり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その下に硫黄附木いわうつけぎが一枚と一とつまみの火口ほぐちが、濡れたまゝ落ちてゐるのを、平次はそつと拾ひながら續けました。
しかし、彼らの頭の上からは、続いて無数の投げ槍とつぶてが落ちて来た。それに和して、耶馬台の軍の喊声かんせいが、地を踏み鳴らす跫音あしおとと一緒に湧き上った。消え残った火口ほぐちほのおは芒の原に燃え移った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「それだけなら兎も角、あの總髮は鉢卷をして居るから誤魔化されたが、間違ひなくかつらですよ。それに、顏半分の不精髭ぶしやうひげだつて、よく見ると、無二膏をなすつて、その上から火口ほぐちを附けて居る樣子で」