濃藍のうらん)” の例文
やがて燈火あかりが背からす。そしててすりの前のさざ波は、見ているうちに濃藍のうらんから真っ暗になってゆく。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海は毎日のように静かで波の立たない海面は、時々緩やかなうねりが滑かに起伏していた。海の色も、真夏に見るような濃藍のうらんの色を失って、それだけ親しみやすい軽い藍色あいいろに、はる/″\と続いていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ねたまじ、きみ濃藍のうらん
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
濃藍のうらんの夕空に、ふと、三日月の光を仰ぐとき、山中鹿之介幸盛の不撓不屈ふとうふくつを想うて、おのずから敬虔けいけんな心に打たれる——とは、後々まで、武門の人がみないったことばである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして山上から麓にいたるまでも、豪壮な建築物の壁や屋根の森のあいだに点綴てんてつされ、それから平面にひらけている安土城下の全市街は、濃藍のうらんな暮色のなかに星をいたような灯の海をなしていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)