漁場りょうば)” の例文
と女房は、毎日のように顔を見る同じ漁場りょうば馴染なじみやっこはりものにうつむいたまま、徒然つれづれらしい声を懸ける。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平潟は名だたる漁場りょうばである。湾の南方を、町から当面とうめん出島でしまをかけて、蝦蛄しゃこう様にずらり足杭あしくいを見せた桟橋さんばしが見ものだ。雨あがりの漁場、唯もうなまぐさい、腥い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「あれが漁場りょうば漁場へ寄って、魚を集めて阪神へ送るのです」桂三郎はそんな話をした。
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
……行ってみると漁場りょうばの争奪、漁師の喧嘩、発動機船底曳そこひき網の横暴取締り、魚市場の揉め事、税金の陳情なぞ、あらん限りのイザコザを持ち掛けて来る上に、ついでだからというので子供の名附親から
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つまり何かの事情で移住してきたこれらの漁師たちは、その湾の漁場りょうばは土地の漁師に占められ、また舟を持つ余裕もないらしく、余儀なくこの防波堤にも仕事にやってくる。大体そういうことらしい。
魚の餌 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
丁度其処に木をりに来た男が見つけて、大騒おおさわぎになりました。——其奴ですか。到頭村から追い出されて、今では大津に往って、漁場りょうばかせいで居るってことです
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)