湯文字ゆもじ)” の例文
もしや先刻さっきの混雑に紛れて、誰かがその女の着物をかすめたとしても、足袋一足、湯文字ゆもじ一枚も残さぬという筈はなかった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水いろの湯文字ゆもじなんぞを、ちらちらさせて見せやあがる——俺だからいいが、生ぐさい坊主であって見ろ、あいつの流し目を食っちゃあ、ちょいとこらえ性が、なくなろうってもんだ——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
脱いだものは脱ぎッ放し、喰べた物は喰べッ放しと云う有様で、喰い荒した皿小鉢だの、飲みかけの茶碗ちゃわん湯呑ゆのみだの、あかじみた肌着や湯文字ゆもじだのが、いつ行って見てもそこらに放り出してある。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
狼狽者ろうばいしゃが居たとして、その女の着衣を持ち出したとしても、足袋たびの片足や、湯文字ゆもじの一枚までも残さぬなどという大胆不敵な行動が、あの際出来るものでなく、下駄の無いことに至っては
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)