湯婆たんぽ)” の例文
また曲った道をいくつも曲って、とうとう内へ帰りついて蒲団の上へ這い上った。燈炉とうろを燃やして室はあたためてある。湯婆たんぽも今取りかえたばかりだ。
熊手と提灯 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
暁になって湯婆たんぽがさめた、というような場合には、何となく淋しく哀れなような心地がして詩情が動くものである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それは「をば捨てん湯婆たんぽかんせ星月夜」と「黒塚くろづか局女つぼねをんなのわく火鉢」との二句である。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その頃の事にして時は冬の夜の寒く晴れわたり満天糠星ぬかぼしのこぼれんばかりにかがやける中を、今より姨捨てに行かなんとて湯婆たんぽを暖めよと命ずるなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
硯、紙などまた枕元に運ばせたれど一間半の旅行につかれて筆を取る勇気も出ねばしばし枕に就く。溲瓶しびんを呼ぶ。足のさきつめたければ湯婆たんぽに湯を入れしむ。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
足の裏の冷や冷やする心持は、なまゆるい湯婆たんぽへ冷たい足の裏をおっつけて寒がっていた時とは大違いだ。
初夢 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
姨捨てん湯婆たんぽ𨣉かんせ星月夜 言水
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
うば捨てん湯婆たんぽかんせ星月夜
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)