渺漠びょうばく)” の例文
イシカリ川、その源は遠く山間に発し、委蛇いいとして西海に入る、沿岸は渺漠びょうばくたる大原野ありて四方便利の地たり、これを
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
人無村ひとなしむらをかけぬけて、渺漠びょうばくたる裾野すそのの原にはいると、黒馬こくばしょうは、くらのうえから声をからして、はげました。あまたけの火はまだ赤々ともえている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、一里あまり奥の院まで、曠野の杜を飛々とびとびに心覚えの家数は六七軒と数えてとおに足りない、この心細い渺漠びょうばくたる霧の中を何処へ吸われて行くのであろう。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
元来神は、吾人の見る事の出来ぬ渺漠びょうばくたるもの、ては、広大無限、不可思議の宇宙を造り、その間には、日月星辰山川草木と幾多の潤色がしてある。今我が立てる処もまたその撰にもれぬ。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)