温順すなお)” の例文
どうしてもこうしても温順すなお此方こちの身を退くよりほかに思案も何もないか、ああないか、というて今さら残念な、なまじこのようなことおもいたたずに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どうでしょう、高瀬君、今度塾へ御願いしましたせがれの奴は。あれで弟と違って、性質は温順すなおな方なんですがネ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あなたはいつも沈着で敬虔けいけん温順すなおな人物であるのに、どうしてそんなに、野獣などのように怒り狂っているのです。気をおつけなさい。悪魔の声に耳を傾けてはならない。恐れてはならない。
何ごとも皆天運まわりあわせじゃ、此方こちの了見さえ温順すなおやさしくもっていたならまた好いことの廻って来ようと、こうおもって見ればのっそりに半口やるもかえって好い心持
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)