涙腺るいせん)” の例文
言わば高圧釜こうあつがまの安全弁のように適当な瞬間に涙腺るいせんの分泌物を噴出して何かの危険を防止するのではないか、そうでないとどうも涙の科学的意義がのみ込めない。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それだのに涙腺るいせんは無理に門を開けさせられて熱い水のせきをかよわせた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
父はその時始めて盲目めくら涙腺るいせんから流れ出る涙を見た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
有難さにまたも新しい泉がこんこんと涙腺るいせんを熱する。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべての優しい人々の涙腺るいせん
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
悲しいとき涙腺るいせんから液体を放出する。おかしいとき横隔膜が週期的痙攣けいれんをはじめる。これも何か、もっとずっと悪い影響を救うための安全弁の作用をしているに相違ない。
鎖骨 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
上手じょうずな俳優が身も世もあられぬといったような悲しみの涙をしぼって見せれば、元来泣くように準備のととのっている観客の涙腺るいせん猶予ゆうよなく過剰分泌を開始するのであって
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)