海津かいづ)” の例文
海津かいづの浦に着きにけり、でいっぱいに並ぶ。「いかに弁慶」から台詞せりふの受渡し、「いざ通らんと旅衣、関のこなたへ立ちかかる」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さらに長駆して川中島を突破し、敵の一拠点、海津かいづを抜き、附近を席捲せっけんし、少なくも信玄勢力圏の一端に報復を与えて引揚げても遅くはあるまい。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其上に、丹羽五郎左衛門尉長秀を海津かいづ口の押となし、長岡(後の細川)与一郎忠興を水軍として越前の海岸を襲わしめると云う周到なる策戦ぶりである。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もう忘れかかっているからその名称を採録しておかねばならぬ。岐阜県の海津かいづ郡などで、ナマコと謂っているのがこの米の汁の普通の名であったらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
車竿で倫糸みちいとを四十尋出すとか、鮎で五間半の長竿を用ひ、海津かいづでも四間半などといふのは、どうも面白くない。それに日本特有の竹竿は外国へ行つてはあまり使へない。国によつて竹はすぐ折れる。
日本の釣技 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
生憎あいにく沙魚はぜ海津かいづ小鮒こぶななどを商う魚屋がなくって困る。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この日の二十日未明、長秀は、海津かいづめてある一子鍋丸なべまるを将とする軍隊から、早馬をもって
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「早々、船をなぎさへつけ、兵馬をことごとく、岸へ上げい。そこでまた、その方どもは、急いで船を返し、海津かいづとどめてある鍋丸の軍勢の三分の一を分けて、即刻、当所への加勢に駈けつけさせよ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)