洗粉あらいこ)” の例文
たった一台交通規則を無視した車がいたため数十台が迷惑するというのがこういう場合の通則である。「クラブ洗粉あらいこ」の旗を立てた車も幾台かいた。
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
俊助は軽蔑とも同情とも判然しない一種の感情に動かされながら三度みたびこう呟いて、クラブ洗粉あらいこの広告電燈が目まぐるしく明滅する下を、静に赤い停留場ていりゅうばの柱の方へ歩き出した。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
金時計は当らないで、こんなものがあたったと云って、たもとから倶楽部くらぶ洗粉あらいこを一袋出した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
魔子を伴れて洗粉あらいこ石鹸せっけんや七ツ道具をそろえて流しを取ったこの児煩悩のお父さんが、官憲から鬼神のように恐れられてる大危険人物だとは恐らく番台の娘も流しの三助さんすけも気が付かなかったろう。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)