氷罅クレヴァス)” の例文
吹雪、青の光をふきだす千仭せんじん氷罅クレヴァス。——いたるところに口を開く氷の墓の遥かへと、そのエスキモーは生きながらまれてゆく。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ただ、米大州に現われたはじめての日本領を、政府が追認するのを切に祈りながら……。氷罅クレヴァスのなかでブランブランに揺れていたのだ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
小さな極光が、ぶよぶようごく真赤な虹をあらわし、その核心からでる金色の輻射線ふくしゃせんが、氷罅クレヴァスのうえをキラキラっと流れてゆく。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しようと、たとえば、千ポンドのおもりをつけようと、この風のなかは往けぬよ。しかし、氷罅クレヴァスをくだって洞を掘ったら、どうだ
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
やがて、青に緑にさまざまな色に燃える氷罅クレヴァスの一つを四人が下りていった。試しに氷斧ピッケルをあてると、ボロッとそこが欠けた。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
猛速、強震動を発し、登行者を苦しめる。突然、数丈もある氷塔が頭上に落ちてくるだろう。また、なにもない足下に千仭せんじん氷罅クレヴァスが空くだろう。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「そうだ。表面氷河は氷斧ピッケルをうけつけぬ。しかし、内部なかあめのように柔かなんだ。掘れるよ。とにかく、折竹のいうとおり氷罅クレヴァスを下りてみよう」
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
噛みあう氷罅クレヴァス、激突する氷塔の砕片。それが、風にあおられて機関銃弾のようになり、みるみる人夫の顔が流血に染んでゆくのだ。まさに流れる氷帯ではなく、氷の激流。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
うねもある。なかには氷罅クレヴァスもある。ときどき、ひょうのようなのがばらばらっと降ったり、粉塩を小滝のように浴びることがある。と、ふとそばの壁をみたとき、思わず私ははっと呼吸いきをとめた。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)