水筆すいひつ)” の例文
「ところで、お前に少し訊きたいことがあるんだが、一昨日おととい一昨々日さきおととい頃、この店へ筆を取り換えに来た人はなかったかえ。この水筆すいひつだ」
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
うちの人の二千五百年史なんか、二銭五厘の水筆すいひつで書き上げたんぢやないか、真実ほんとに贅沢な学校だよ。」
小供のうち花の咲いた、葉のついた木瓜ぼけを切って、面白く枝振えだぶりを作って、筆架ひつかをこしらえた事がある。それへ二銭五厘の水筆すいひつを立てかけて、白い穂が花と葉の間から、隠見いんけんするのを机へせて楽んだ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
筆は二本ながら水筆すいひつで、その一本はまだ新らしく、白い穂の先に墨のあとが薄黒くにじんでいるだけであった。半七はその新らしい筆をとって眺めた。
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)