水槽タンク)” の例文
水を飲もうと炊事場の水槽タンクのあるほうへ行きかけ、ふと狭山の寝台の下に、茶褐色の犬のようなものが蹲っているのを発見した。
海豹島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この船の料理部屋の背後うしろの空隙なんかへ行く連中は、ドン底の水槽タンク鉄蓋てつぶたまで突き抜けた鉄骨の隙間すきまに、一枚の板を渡して在る。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
水族館といつても、それはほんの名ばかりで、或ひは私が夜間しかそこに這入らないせゐか、ほとんど水槽タンクのなかに魚の泳いでゐるのをば、私は見たことがないのである。
水族館 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
やがて掘りだされたのは、背の高い水槽タンクほどもあるセメントの円柱だった。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
山林を切り開いて作つた煙草畑まで、一町餘りも下の田の中の井戸から、四斗入りのトタンの水槽タンクを背負つて、傾斜七十度の細い畦道を、日に幾度となく往き還りする老父の駒平の姿はいたいたしい。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「わしはもう一匹のやつを炊事場の水槽タンクの中に飼ってありましたで、薪小屋へ花子に息をつかせにいくときは、そいつを身代りに寝台の下に置いたのであります」
海豹島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)