気鬱症きうつしょう)” の例文
旧字:氣鬱症
お師匠さまにはあの隠宅もありますし、これがただの気鬱症きうつしょうか何かなら、だれもあんな暗いところへお師匠さまを入れたかありません。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私はかるい気鬱症きうつしょうかかった。祖母は「なんたる懦弱だか。」と云った。祖父は心配して私を清元きよもとの稽古に通わせるようにした。一種の神経衰弱療法である。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
その前から、三平は、気鬱症きうつしょうにでもかかったように、書斎にのみ閉じこもって、食事の時でなければ、滅多に、家人とも言葉を交すことがなかったと云う。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、気鬱症きうつしょうとか申すのだそうでございましょうかな。滅多にございませんが、一旦そうおなりになると一人であすこへ閉籠とじこもって、人と口を利くのを嫌がられます」
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一時小康しょうこうを得て、オペラを書いたり、指揮者になったりしたが、気鬱症きうつしょうは次第につのって、一八五四年二月には突然発作を起してライン河に投じ、その時は人に救われたが、二年後の七月
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
気鬱症きうつしょうにでもとりかれましたか、月を見ると——、そうで厶ります。馬鹿な奴めが、月を見るといつもこの通りめそめそするのがこの男のこの頃の病で厶りますゆえ御見のがし下さりませ。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
恐らく母が娘時代にかかった気鬱症きうつしょうには、これいたのであろう。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)