毛物けもの)” の例文
しばしば洞窟の外で毛物けものの咆える声や、動きまわるけはいが聞え、それが熊かおおかみかはわからなかったが、いずれにせよ二人は助からないものとあきらめた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今度の馬は杖でなぐる度ごとに、蹴ったり竿立さおだちになったりする毛物けもので、大部せき立ててやっと伸暢駈足ギャロップを始めたが、それがまた偉い勢で飛んで行くのである。
かへつてそまりあぐんだ樹は推し倒し、猟夫かりうどの追ひ失うた毛物けものはとつておさへ、旅人の負ひなやんだ荷は肩にかけて、なにかと親切をつくいたれば、遠近をちこちの山里でもこの山男を憎まうずものは
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それに、酒は人間が作りあげたいちばんたっとい宝物だ、毛物けものにも鳥にも魚にも作れやあしなかった、酒が人間の害になるなんてえのは、えせ医者のたわごとよ。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女性というものは温順貞淑なんだ、男には毛物けものめいたものがある。
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)