毒蜘蛛どくぐも)” の例文
もはやなんの争いもなさそうだった。南京虫か毒蜘蛛どくぐものように、情け容赦もなく行動に移るばかりだ……。おれは息が止まる思いだった。
北川氏は決して現実の毒蜘蛛どくぐもまれた訳ではなかった。しかし、毒蜘蛛にもまして恐ろしい執念のとりことなっていた。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まむし蝙蝠こうもりさそり蚰蜒げじげじ毒蜘蛛どくぐもなどを研究することを拒み、「実にきたない!」と言いながら、それらを闇のうちに投げ捨てる博物学者を、人は想像し得らるるか。
……狂人の暗黒時代を背景にして、私を捉えるべく糸を操っているその網の主というのは、学術界に棲息している二匹の大きな毒蜘蛛どくぐもである。曠古こうこの精神科学者Mと、無双の名法医学者Wである。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)