正眼せいがん)” の例文
二人は正眼せいがんに構えたまま、どちらからも最初にしかけずに居りました。その内に多門はすきを見たのか、数馬のめんを取ろうと致しました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大柄の一人は早くも入口をふさいで大上段に振りかぶり、小柄の一人は、一刀を正眼せいがんに、平次のうしろからジリジリと迫ります。
よく上段に構えるとか正眼せいがんにつけるとか申しますが、中々剣術の稽古とは違って真剣で敵を討とうという時になると、只斬ろうという念よりほかはございませんから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その時主水之介が初めて見せた諸羽流奥義の正眼せいがん崩しで、当時七人組は江戸の町道場を人なきごとくに泣かせ歩いた剣豪揃いだったにもかかわらず、ひとたび彼の正眼崩しに出会うや否や
しかる後フト正眼せいがんを得てさて観ずれば、何の事だ、皆夢だ邪推だ取越苦労だ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
櫂の木剣は、正眼せいがんに持たれ、物干竿の長剣は、上段に返っていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南竜軒は竹刀しない正眼せいがんにつける。三宅先生も同じく正眼。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたくしはとうとう数馬の上へ、当然挙げるはずの扇を挙げずにしまったのでございまする。二人はまたしばらくのあいだ正眼せいがんにらみ合いを続けて居りました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)