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歛
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をさ
その常に
慙ぢかつ
悔る一事を責められては、
癒えざる
痍をも
割るる心地して、彼は苦しげに
容を
歛め、声をも
出さでゐたり。
宮はこの散歩の間に
勉めて気を
平げ、色を
歛めて、ともかくも人目を
逭れんと計れるなり。されどもこは酒を
窃みて酔はざらんと欲するに
同かるべし。
善く
歛むれども、内には事足る
老婢を
役ひて、
僅に自炊ならざる
男世帯を張りて、なほも
奢らず、楽まず、心は
昔日の手代にして、趣は失意の書生の如く依然たる
変物の名を失はでゐたり。