検見けみ)” の例文
旧字:檢見
折わるく、もう稲田の検見けみでもございますまいが、代官の萩原年景はぎわらとしかげが、七、八名の家来をつれて、そこの並木へさしかかって参りました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とても役にはたたねえという——当然、御上納のときの検査方から、職場検見けみの役人たちに、おとがめがくることになったのさ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
だから財政の安全と検見けみ入費の節約という明らかな利益があるにもかかわらず、明治の地租条例の時までこの制度を全国化することができなかったのである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ある年、検見けみ役人にいて、岩木川の水害を検分に行った時、彼は後に残って、なお旅をつづけ、一つの決心を抱いて帰った。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
検見けみ役人のように、家康は歩きながらも、田畑の耕作を、よく見ていた。そして、従者に、こんな述懐じゅっかいを聞かせたりした。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爺が身をかわすまに、抱えていた簿冊ぼさつのあいだから、すばやい子供の手が、チラと彩色いろの見えた検見けみ絵図の一帖をさっと抜きとって、もう下でひろげだしていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うさんな六波羅武士どもが、郷々さとざと田涸たがれを検見けみにまいったなどと申しながら、それとなく邸内を窺い見つつ、小半日もムダばなしの末、ついさきほど帰ったばかりだ……。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外の小鳥の音と、桔梗の明るい声が、いつもの朝のように、良人の笑顔をつつみ、これから近くの領下へ検見けみに出かけようという供揃いを、門外に待たせたまま、時を忘れていたのである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)