森閑しいん)” の例文
またあたりは妙に森閑しいんと静まり返って再び山の墓場は木の葉の落ちる音一つ聞えるくらいの侘しい澄んだ黄昏たそがれの色に包まれめたが
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
奸黠老獪かんかつろうかい外交の本家本元ではありながらも、さすがに本館奥まったこの応接間近くは森閑しいんとしてしわぶきの音一つ聞えず、表を通る廊下の跫音あしおと
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
邸の中は一刻増しに森閑しいんと鳴りを潜めてきたが、最後に給仕頭がはいって来た時は、これも見慣れた仕着せを脱いでよそ行きの小粋な背広姿であった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
その声に驚いて、次の間から看護婦が飛んで来てスタンドをひねっても、ただ、スタンドが天井に大きな影を投げているだけで、家の中は森閑しいんとして、深夜の眠りを眠っているだけなのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)