柾木まさき)” の例文
両家の庭境は笠木塀かさぎべいになっているが、一部だけ柾木まさきの生垣のところがある。二人はその生垣の間をぬけて、どちらかの庭へ入って遊んだ。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
溝際には塀とも目かくしともつかぬ板と葭簀とが立ててあって、青木や柾木まさきのような植木の鉢が数知れず置並べてある。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
柾木まさきの生垣を取りまわした人家がまばらにつづいて、そこらの田や池では雨をよぶような蛙の声がそうぞうしく聞えた。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そしてついでに書物の表題も、「柾木まさき孫平治覚え書」と、ありのままに書き直している。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
要木かなめだの柾木まさきだのゝ低くさびしい垣つゞき。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
片側は人の歩むだけの小径こみちを残して、農家の生垣が柾木まさきまき、また木槿むくげ南天燭なんてんの茂りをつらねている。夏冬ともに人の声よりも小鳥のさえずる声が耳立つかと思われる。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
柾木まさき生垣いけがきに小さい木戸の入口があって、それには昼でも鍵が掛けてあるので、二人は更に横手へまわると、ここにも裏木戸があって、その戸を押すとすぐに明いた。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
振り返ってみると、十徳じっとくを着た白髪しらがの、品のいい老人が、柾木まさきの生垣の中からこっちを見ていた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さもなければ、寺である。寺も杉や柾木まさきやからたちをめぐらしているのは新しい建築でない。
亡びゆく花 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
杉、柾木まさきまきなどを植えつらねた生垣つづきの小道を、夏の朝早くいわしを売りあるく男の頓狂な声。さてはまた長雨の晴れた昼すぎにきく竿竹売さおだけうりや、蝙蝠傘こうもりがさつくろい直しの声。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
兩側ともに柾木まさきの生垣が續いてゐて、同じやうな潜門が立つてゐる。表札と松の木とを見定めて内へ入ると新しい二階建の家の、奧深い格子戸の前まで一面に玉蜀黍と茄子とが植ゑられてゐる。
羊羹 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
両側ともに柾木まさきの生垣が続いていて、同じような潜門が立っている。表札と松の木とを見定めて内へ入ると新しい二階建の家の、奥深い格子戸の前まで一面に玉蜀黍と茄子とが植えられている。
羊羹 (新字新仮名) / 永井荷風(著)